最近ではニュースなどの話題でもよく取り上げられ、バライティ番組にも度々登場するドローン(Drone)、皆さんも一度はその名前を見かけたことがあるでしょう。しかしながら、「ドローンってなに?」「なんでドローンっているの?」「そもそもどういう意味?」という疑問に答えられる人は少ないかもしれません。
今回はそんな「ドローン」という言葉の意味について考えていきましょう。
テレビ番組の制作から太陽光パネルの点検まで、幅広い場面で活用が始まっているドローンですが、そもそもこの「ドローン」の意味や定義とは一体どういったものなのでしょうか。
皆さんが最初に思い浮かべるのは、複数のプロペラが搭載されたマルチコプター型の無人小型飛行機だと思います。しかし、元々こういった無人飛行機を英語で表す場合、正式にはUAV(Unmanned Aerial Vehicle)やUAS(Unmanned Aircraft Systems)、RPAS(Remotely Piloted Aircraft Systems)などの単語が使われており、ドローン(drone)は「雄バチ」を意味し、無人飛行機に使う場合は俗称でしかありません。
では、「ドローン」という言葉はいつ頃、何に対して使われ始めたのでしょうか。これには諸説あるそうですが、有力な説としては過去の軍事技術開発時に使われたというものがあります。第二次世界大戦前の1935年に、英国海軍が新たに開発した無人標的機DH82B「クイーン・ビー」のデモンストレーションを気に入った米国のウェリアム・H・スタンドレイ海軍大佐が、同様の無人飛行機の開発自国で指示した際に、この「クイーン・ビー」すなわち女王バチのオマージュとして「ドローン」という言葉を使ったと言われています。
このように軍事用の無人機として発展してきたドローンですが、次第にその技術が民間の産業用としても応用されるようになっていきます。その始まりは意外にも日本だと言われています。1980年代の日本では経済成長とバブルの影響によって農業人口が急速に減少し、農薬散布などの効率化のためにドローンの研究開発が急がれたのです。その先頭に立ったのがヤマハ発動機で、農薬散布を目的としたドローンが開発されていきました。ただし、当時のヤマハ発動機は「ドローン」という言葉に軍事機のイメージがあるということで、その名称は使わずに農薬散布用の無人ヘリコプターとして開発を行っていました。
ドローンが世の中に知れ渡るきっかけとなったのが、2000年代のアフガニスタン紛争やイラク戦争です。この時、対戦車ミサイルなどで武装した軍事用無人飛行機(キラードローン)が次々と投入され、それがメディアで大きく報じられたことで、「ドローン=高い性能を持つ無人飛行機」というイメージが一般の人々の間で定着しました。
こういったイメージの流れに乗ったのが、2000年代後半から登場してきた、次世代型のラジコンヘリコプターです。それまでのホビー用ラジコンヘリは、シングルローター型で、比較的大きく高価なものが多く、操作もすべてマニュアルで行う必要があり、素人が簡単に手を出せる代物ではありませんでした。それに対して、新たに登場してきたラジコヘリは、複数の回転翼をもつマルチローター型をしていることが多く、サイズも室内で飛ばせるほどの大きさで、飛行中の機体を安定させる自動制御機能が組み込まれており、初心者でも扱いやすいものでした。
こうした現れた次世代型のラジコンヘリの外見上の違いや高い性能が、軍事用ドローンを彷彿とさせたため、徐々にこいうったホビー用の小型無人機に対しも「ドローン」という言葉が使われるようになり、2010年にパロット社が発売した「ARドローン」のように、自ら「ドローン」を名乗る製品も現れ始めました。
ARドローン以降、ホビー用ラジコンヘリとして4つの翼を持つクワッドコプター型の機種が大量に登場し、「ドローン=クアッドコプター」というイメージが生まれてきました。また、その進化系として、翼の数が6つや8つのものであったり、固定翼のものであったり、ティルトローター機の形状をしたりと、様々のものが現れています。
こうした形状の進化と共に、その自律性についても「ドローン」は進化しており、今では完全に自動で飛行するものも現れています。そもそも、高い自律性によって初心者でも扱いやすい機体というのがドローンの原点であるため、自律性の有無を定義に加えるべきという考え方もあります。
社会的に注目を浴びるようになった技術は、定義が曖昧になる傾向にあります。「ドローン」もその認知度が上がるに伴って俗称として様々な意味を込めて使われてきているため、明確な定義を定めるのは難しいのが現状です。今後、様々な分野でドローンが活躍していくことで、その言葉の意味はさらに広がっていくかもしれません。